誰が哲学者なのか、

と問われれば、それは隈研吾氏ではないかと思う。

哲学をするというのはどういうことなのかというと、まあそんなことはよくわからないけれど、

それでも隈研吾さんという建築家は確実に哲学をしているのだと、そう思います。

正直その文章を読んで驚きました。ここまで考えているんや、この人は哲学者なんや、と。

そして世界の中で大いなる矛盾と向き合いながら、葛藤を繰り返しながら、たくさんの批判を受けながら、逆風に向かって、戦い続けている、と。

いろいろとその言葉には静かなる力が込められています。静かで膚にしみいる言葉で。

一条高校に来られた時、少しだけお話させていただくことが出来ました。穏やかで優しい人柄であるとともに、その時の言葉もよくおぼえております。

建築というのはみんなで一緒に行なうものですよと。

その言葉にまったく嘘とか社交とかはない。世界的な建築家でありながら、自分だけの経験や感覚だけでものごとを進めようとしない潔さがあるのかな、と感じた次第です。

その時代、その場所で、その人たちで、何を作りあげ、生活をどうかたちつくるのか、誠実に確かめてわれわれは前に進んで行けるのであると。

哲学をするというのは、現実のこの社会の中で、静かに、そして受け身でありながらも闘い続けることなんやな。